
彼女の日焼け止めを空にした俺、坂の上の薬局から向かった場所
コラム
桟橋の窓口の列に並びながら、俺はポケットの中で彼女の日焼け止めのキャップを閉め直していました。彼女の日焼け止めを買い直そうと、坂の上の薬局で返ってきたのは、それならさっき売れてしまったという答えでした。
思いついたサプライズ
彼女との旅行の初日でした。この町のクルーズ船は当日券が窓口でしか買えないと知り、彼女が寝入ったあとに計画したサプライズです。部屋を出る直前、荷物に自分の日焼け止めを入れ忘れたことに気付き、洗面台にあった彼女のチューブを、ひと塗りのつもりで持ち出しました。窓口が開くまでの列は日なたで、汗で流れてはまた塗り、券を2枚買って部屋に戻る頃には、チューブは目に見えて軽くなっていました。俺はへこんだそれをポーチへ戻し、何食わぬ顔でベッドに転がりました。
「俺も焼けたくないし」
シャワーも浴びないうちに彼女が起き、日焼け止めを振ってから俺に聞きました。「これ、使った?」。ここで種明かしをすれば、夕食の計画ごと崩れると思いました。とっさに出たのが、あの一言でした。「俺も焼けたくないし」。口にした直後、選び方を間違えたと分かりました。彼女の肌が弱いことは知っていましたが、その1本の重みまでは、まだ考えが及んでいなかったのです。券のことを言えないまま、俺はスマホの地図で近くのドラッグストアを探し始めました。
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隣町行きのバス























