「営業時間くらい、守ってください」シャッター前でそう言った私が、後日読んだ貼り紙

コラム

数日後、また早く下りたシャッターに、1枚の紙が貼られていました。読み終えたとき、あの日の自分の声が、別の意味を持って返ってきたのです。

仕事帰りに寄る駅前のパン屋の前で、半分下りたシャッターが目に入りました。掲示された営業時間まで、まだ間があるはずです。私は、店じまいを始めた店主に歩み寄っていました。

半分下りたシャッターの前で

そこはクリームパンがおいしくて、仕事帰りに何度も寄っていた店でした。名前も連絡先も知らない、ただの客と店主です。

その日もいつものつもりで角を曲がると、店の明かりはもう落ちかけていて、店主が入口のシャッターに手をかけていました。掲示と違うではないか。頭の中で、その思いだけが膨らんでいきました。

「営業時間くらい、守ってください」

気づけば、口に出していました。店主は手を止めてこちらに向き直り、「すみません」とだけ言って頭を下げました。言い訳の1つもないことが、かえって私の苛立ちを押し上げました。

シャッターに貼られた1枚

数日後、同じ道で、シャッターはまた早くに下りていました。今度は文句より先に、目が1枚の紙に留まりました。

「1人で焼いているため、パンがなくなり次第、店を閉めています。ご迷惑をおかけします」

何度か読み返して、ようやく思い当たりました。そういえば、レジにも厨房にも、いつもあの店主しかいませんでした。棚のパンが早い時間に減っていた日も、確かにあった気がします。あの日、シャッターの向こうの棚は、空だったのかもしれません。

事情を聞かないまま、私は営業時間だけを見て強い言い方をしていました。帰り道、あの日の自分の言い方を何度も思い返していました。

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