彼女が毎週買う同じミルクティーを半年飲み続けた俺が、言えずにいたこと

コラム

「本当は、何が好きなの」と聞かれて、俺は半年そらし続けた答えを口にしました。冷蔵庫の景色が変わるまでの話です。

冷蔵庫の扉が閉まる音を合図に、俺は飲みかけのグラスを流しへ運びました。

初めて泊まった日の1本

彼女と同棲を始めて半年。2人で暮らす部屋の冷蔵庫には、初めて泊まった頃から同じ銘柄のミルクティーがありました。あの日、食事のときに出されたグラスを、俺は何も言わずに飲みました。正直に言えば、あの甘さは得意ではありません。それでも、切らさず補充されるのを見て、彼女の好物なのだと思い込みました。最初に黙って飲んでしまった手前、その後も冷蔵庫にあれば注いで飲むのが当たり前になっていきました。

口にできなかった本音

彼女が補充する手つきを見るたび、これは俺のぶんも考えて買ってくれているのだと思い、味の話を切り出せませんでした。冷蔵庫の中身に注文をつければ、俺が来る前から続く彼女の暮らしを塗り替えてしまう気がしたのです。ある日、「これ、いつも同じだね」と言ったのが、俺の精いっぱいでした。彼女は「ただの習慣だよ」と返し、その1本を冷蔵庫の一番手前に置き直しました。俺はいつものようにグラスに注ぎ、最後まで飲み干しました。本音を言うより、飲むほうが楽だったのです。

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