
封を切らない箱を積んだまま、俺は次に出ていく話をしていません
コラム
封を切らないと決めたのは、最初に移った年
上の段の戸を引くには、彼女に少し下がってもらう必要がありました。
「開けたら、次に出るときに困るから」
最初の移動のとき、引っ越しの際に運べる荷物の量には限りがあって、俺は並べていたものの半分を置いていきました。何を残すかを選んだのは自分です。あの選び方をもう一度するくらいなら、はじめから出さないほうがいい。そう決めてからは、箱の側面の住所を消しては書き足すだけになりました。移った回数と、書き足した回数は同じです。
「次に出るときって、いつ?」
「まだ決まってない」
これは事実です。ただ、決まれば出ていくつもりでいることを、俺は彼女に伝えていませんでした。
そして...
「この箱、開けてみてもいい?」と彼女に聞かれて、俺は列の上から1つ下ろし、テープの端を起こしました。あの椀は移る前に買って、どの部屋でも棚に置かずにきたものです。今は上から順に封を切っています。次に出ていく話のほうは、まだしていません。
(30代男性・設備保守)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)


























