あの方に合わせているつもりでした。6年、僕はその1人にだけ挨拶を書いていません

コラム

取引先へ出す文の例文は、社の共有の場所に40ほど並んでいます。僕は6年前の秋から、そのうちの1つを使うのをやめました。やめたことを、あの方に確かめたことはありません。

頭の挨拶を、1人ぶんだけ外しました

僕は注文を受ける側の担当で、あの方は頼む側の担当です。同じ場所にいたのは6年前に一度、うちへ来ていただいたときだけで、以後は画面だけの間柄になりました。うちの会社では、取引先へ出す文の頭に決まった挨拶を置きます。誰が書いても同じ形で、置けば文はその分だけ長くなります。「その日程で承ります」。あの方へ返す文が短いのは、頭の分をまるごと外しているからです。外しているのは、あの方が短い文を好まれると考えたからでした。

そう考えたのは、あの秋の1件からです

注文された数より、箱を1つ少なく納めた回がありました。取り違えたのは僕の側です。あの方は不足をご自分の会社の在庫で埋め、こちらへ届いたのは「こちらで回せましたので、次の分に足していただければ大丈夫です」の1通だけでした。経緯の説明も、書面での申し入れも求められていません。頭の挨拶も、こちらを責める言葉も入っていませんでした。僕はその1通を、この方の好みだと読みました。合わせるのが礼儀だと考え、次の依頼から頭の挨拶を外し、返事もできるだけ早く出すようにしました。

  • X
  • Line