
「大丈夫」と言えなかった私が、退職の日に後輩へ残した失敗の記録
ライフスタイル
大丈夫という一言は、新人の頃に誰からももらえなかった言葉でした。同じ順番で間違える後輩へ、私はそれを別の言い方でしか差し出せずにいました。
20年近く前の手帳を通勤の鞄に入れたのは、これで3度目でした。前の2度は家まで持ち帰れず、引き出しへ戻しています。退職の日、鞄の底で角の丸くなった表紙が、また指に当たりました。
新人の頃にもらえなかった言葉
新人の頃の教育係は、間違いを直しはしても、それ以上は口にしない人でした。封筒の宛名を間違えた日も、直された封筒だけが机に戻ってきました。手帳に「宛名、様と御中を両方書いた」と書き、余白に「誰も何も言ってくれない」と足しました。
2年前、隣に来た後輩が同じ封筒を作りました。口から出たのが「新人の頃の私にそっくり」です。ここから20年やってこられた、だからあなたも大丈夫。そう言うつもりの言葉でした。
伝えたいことを言い換えられずに
言うたびに後輩が封筒を裏返すのは見えていました。目が合わないことも、返事が短くなっていくことも。それでも言い換えられません。大丈夫、と口にしてみると、自分がもらえなかった言葉のせいか、どうにも軽く聞こえてしまうのです。
見積書の桁を間違えて先方から電話が入った日、また同じ言葉が出ました。「新人の頃の私にそっくり」。後輩はプリントアウトを机に伏せて、こちらを見ずに言いました。「私は先輩じゃないので」。見積書から目を上げられないまま、少し置いて「そうね。ごめんなさい」とだけ返しました。
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最後のページに書いた「大丈夫」


























