
別れた彼が荷物を全部返してきた。でも最後に渡した手紙だけが、どこにもなかった話
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彼から送られてきた段ボール箱の中には、彼の部屋に置いたままだった私の荷物が、きちんと畳んで詰められていました。付き合っていた二年半で、少しずつ増えていったこまごまとした品々です。けれど何度確かめても、別れ際に渡したあの手紙だけが、どこにも見当たらなかったのです。
別れの日のこと
別れを切り出したのは、彼のほうでした。二年半付き合って、大きな喧嘩をしたわけでもありません。向かい合って座ったテーブルで、彼は私の目をまっすぐ見て言いました。「これ以上一緒にいても、君を幸せにできない気がするんだ」優しい言い方のようでいて、私の気持ちは置き去りにされた一方的な結論でした。
私はうなずきだけで応えるのが精一杯でした。言いたいことは山ほどあったのに、その場では伝えられません。だから数日かけて、便箋に手紙を書きました。感謝と、まだ消えない気持ちと、それでも前を向こうという思いを綴り、最後にこう書き添えたのです。「あなたと過ごした時間を、私は後悔していません」。その手紙を、私は彼に手渡しました。
几帳面に返ってきた荷物
箱の中身を畳に並べてみて、私は彼らしいと思いました。忘れていた小さなヘアゴムひとつ、貸したままだった文庫本、いつかあげたマグカップまで、ていねいに包まれて入っていたのです。彼は昔から、物の管理がきちんとした人でした。別れたあとも、その几帳面さは変わらないようです。けれど、ひとつ残らず返されたその完璧さが、かえって私の心に小さなとげのように残りました。まるで、彼と過ごした時間そのものを、ひとつずつ箱に戻して送り返されたようでした。きれいに整えられた荷物を前に、私はしばらくその場に座り込んでいました。
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ひとつだけ、戻らなかったもの

























