
いらない物なんてひとつもなかった。それでも僕は、彼女の手紙だけを箱に入れなかった
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卑怯な僕
結局、手紙を引き出しに戻して、僕は箱の口を閉じ、宅配で送りました。彼女のもとには、手紙以外のすべてが届いたはずです。全部返したのに一通だけがない。それを見た彼女がどう思うかは、想像がつきました。捨てられたと誤解するかもしれない。冷たい男だと思うかもしれない。それでも僕は、本当のことを打ち明けませんでした。あの手紙を手元に残したと言うのは、まだ彼女を忘れられていないと認めるのと、同じだったからです。全部返せる几帳面な男のふりをして、たった一通だけを抱え込む。我ながら、ずいぶん卑怯なことをしたと思います。
そして...
あの手紙は、今も僕の引き出しにあります。返せなかったのではなく、返したくなかったのだと、自分でもわかっています。彼女の荷物を全部箱に詰めながら、僕が本当に手放せなかったのは、物ではなく、彼女が僕を想ってくれた気持ちそのものだったのでしょう。それだけは、どうしても誰かに送り返す気になれませんでした。いつか彼女が、新しい場所で笑っていてくれたらと思います。そのときまで、この一通は僕が預かっておきます。胸を張れる別れ方ではなかったぶん、せめてこの気持ちだけは、ちゃんと覚えていようと決めました。
(20代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)


























