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十年ぶりに娘へ「今さら関わってこないでよ」と言われた日。それでも、顔が見られればそれでよかった

コラム

娘に連絡しようと決めた夜、文章を何度も書いては消した。「会えないか」という一言を送るまでに、どれほど時間がかかったかわからない。

連絡しようと決めた夜

肺に影が見つかったのは、半年ほど前のことだ。検査を重ね、最終的に医師から告げられた言葉を、俺は一人で聞いた。アパートに戻ってから、引き出しの中にある娘の古い写真を取り出してしばらく眺め、会いたいと思った。

ただそれだけだ。

ただ、病気を理由に来させるのは違う気がした。心配をかけて、申し訳なさそうな顔をした娘と向かい合うのは、自分には耐えられない。だから「ただ会いたい」だけを理由にしようと、そう決めた。

「今さら関わってこないでよ」

駅の改札から娘が出てきたとき、思わず目頭が熱くなった。大人になっていた。当たり前のことが、こんなにも胸に刺さるとは思わなかった。

喫茶店で向かい合い、何から話せばいいかわからず、俺はコーヒーカップを両手で握っていた。「なんで急に連絡してきたの」と娘が聞いてきた。「ただ、会いたかっただけだよ」と答えた。本当のことだから。「今さら関わってこないでよ」という言葉が返ってきた。怒りじゃなく、積み重なった寂しさの声だと思った。だからただうつむいた。

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