
あの日「まだバイトしてるの?」と笑った私が、彼女の店のカウンターで気づいたこと
コラム
あの日、確かに私は彼女を見下していました。正社員になるのが当たり前だと、本気で思っていたのです。あれから10年、思いがけない場所で再会しました。
優越感だった
成人式の夜、久しぶりに集まった同級生たちの中で、彼女は「今は飲食店でバイトしてる」と答えました。
そのとき私の口をついて出たのが、「あんた、まだバイトしてるの?」心配だったのかと聞かれたら、違います。
大手の会社の総合職に内定が決まっていた私は、「早く正社員になりなよ」と続けました。周りが黙ったのにも気づいていました。それでも、自分のほうが正しい道を歩んでいるという確信がありました。今思えば、あれは確信ではなく、ただの優越感でした。
肩書きがなくなった朝
入社3年で異動、5年で昇格。順調に見えていた道の裏側で、毎朝会社のエレベーター前で足が止まるようになりました。成果を出しても評価されず、後輩に追い抜かれる焦り。9年目の春、体調を崩して休職届を出しました。
「あなたの代わりはいくらでもいるから」
上司のその言葉が決め手になり、退職を選びました。会社を辞めた翌月、名刺も肩書きもない自分に、初めて向き合うことになったのです。
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あの子の店のドアを開けた日


























