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「ちょっと待ってて」と言ったまま30分。彼女に送った1枚の写真が、何の説明にもなっていなかった夜

コラム

彼女には、家族のことをほとんど話していませんでした。姉から急な連絡が入ったあの夜、俺は判断のすべてを間違えていたのだと思います。

姉からの電話で家を出た夜

家でゆっくりしていたところに、姉から電話が入りました。「子どもが高熱で病院に来てる、付き添ってくれない?」。声が震えていました。姉は数年前に夫と別れてから一人で甥を育てていて、自分も体調を崩しがちです。咄嗟に上着を掴んで家を出ました。タクシーで病院に向かう間、家族の事情を一度も話していない彼女のことが頭をよぎりました。最近忙しさで連絡が途切れていたこともあって、せめて声だけでも聞きたい。病院の入口に着いたところで、彼女に「通話していい?」とメッセージを送りました。

「ちょっと待ってて」のつもりだった

すぐに「いいよ」と返事が来ました。スマホを耳に当てたところで、看護師の方が手招きしているのが見えました。「ちょっと待ってて」。彼女が「もしもし」と言うより先に、自分の口からそう出ていました。受付、検温、ベッドの場所、姉の説明、医師への確認。

気がつくと30分が経っていました。通話を切ったのは、甥がやっと眠った後でした。スマホを見ると、画面の通話時間に彼女の名前が並んでいます。30分間、彼女はずっと繋いでくれていたのだ、と気づきました。何かを送らなければ、と焦って、点滴の先と自分の指が写った写真を選びました。「今こういう状況」と、言葉のかわりに見せたつもりだったのです。

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