
「根性のない奴は本気を出せ」と煽った俺→水泳大会で教え子の泳ぎを見届けて、頭を上げられなくなった
コラム
泳ぎ続ける教え子の前で
15分、20分、25分。プールから子どもたちが次々に上がる中、あいつは止まりませんでした。観客席がざわめき始め、保護者たちもプールに視線を集めていました。
俺は計測のためプールサイドに立っていましたが、その場から動けませんでした。あいつの母親が観客席で、両手を胸の前で組んで息子だけを見つめていました。普段「根性がない」と俺が言ってきた、あの子の母親です。その横顔を見たとき、自分が何を見ていなかったのかを、嫌でも理解しました。
速さで測ることしかしてこなかった俺の評価軸では、この泳ぎを正しく測れない。「気合い」も「根性」も、本当はあいつの中に積み重なっていた。俺がそれを違う形でしか見ようとしていなかったのです。
そして…
あいつは学校創立以来の最長記録を打ち立てて、プールから上がりました。生徒たちの拍手の中、あいつは恥ずかしそうに、けれど確かに胸を張っていました。
閉会式のあと、俺はあいつの母親の前まで歩いていきました。何から謝るべきか分からず、出た言葉は「お母さん、すみませんでした」でした。お母さんは少し驚いた顔をして、それから小さく頭を下げ返してくれました。
職員室に戻って、自分のロッカーに貼ってあった「気合い」と書かれたペナントを外しました。明日からの体育で、あいつにかける言葉は、まだ見つけられていません。けれど、見つけるところから始めるしかない。それくらいは、ようやく自分に課せるようになったのです。
(30代男性・小学校教諭)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)

























