
35年抱えてきた姑への記憶。夫の素朴なひとことが、私とお嫁さんの距離を変えた
コラム
台所で、長く隠してきたことを口にした
食後、お嫁さんと並んで台所に立ったとき、私はすすぎを終えた手のまま、止まっていました。お嫁さんはいつも通り、皿洗いを続けてくれていました。背中越しに、エプロンの紐がきれいに結ばれているのが見えます。
「ごめんなさいね、ずっと冷たくして」
声に出してから、自分でも驚きました。蛇口の音が止まり、お嫁さんがこちらを向きます。私は窓の外を見つめたまま、続けました。
「私、自分が嫁いできた頃を思い出してしまって。あの頃のお義母さん、本当に怖い人だったの。何をしても認めてくれなくて」
35年抱えてきたことが、こんなにあっさり言葉になるとは思いませんでした。「あなたに辛い思いをさせたくなくて、距離を置いてしまったの。私みたいに、あなたを苦しめたら嫌だと思って」
お嫁さんが「お義母さん」と呼んで、私の手の上に、自分の手を重ねてくれました。温度を感じたとき、ようやくこの子の手をちゃんと見たのは、3年で初めてだと気づきました。
そして...
「私こそ、ずっとお話ししたかったんです」
お嫁さんの声が涙で揺れていました。私の中で35年閉じてきた何かが、その声でほどけていきました。
「母さんの若い頃に似てるなあ」というあのひとことは、お嫁さんへの褒め言葉であると同時に、私への「もう昔のことはいいんだよ」という合図だったのかもしれません。リビングでテレビを眺めている夫の背中が、いつもより少しだけ優しく見えました。
(60代女性・専業主婦)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)


























