
私の差し入れだけ名前を伏せて配る彼。「よかったら、どうぞ」と手渡されて気づいたこと
コラム
うまく笑えなかった
お菓子はあっという間になくなり、何人かが「これ誰がくれたんだろう、おいしかった」と言い合っていました。私が作ったものだと、誰も知らないままです。私は「よかった」と相槌を打ちながら、うまく笑えていたか自信がありませんでした。私だけ名前を伏せられたのは、なぜなのだろう。彼にとって、私からの差し入れだと知られるのは、都合が悪いことなのかもしれない。そんな考えばかりが浮かんで、私はそっと空になった箱を片づけました。
そして...
本当は、その場で理由を聞けばよかったのだと思います。でも、「どうして私の名前だけ言わなかったの」と尋ねる勇気は、どうしても出てきませんでした。問い詰めて、面倒な子だと思われるのが怖かったのです。それでも私は、次もきっと焼き菓子を持っていくのだろうと思います。喜んでくれる顔が見たいという気持ちは、名前を呼ばれなかったくらいでは消えてくれませんでした。ただ、あのとき彼が何を考えていたのか。それだけは、今でも少し知りたいままでいます。
(20代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)


























