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優しさのつもりが、いちばんずるい逃げでした。好きな人を振った僕が予約した店

コラム

本当は彼女のそばを離れたくありませんでした。それでも付き合えないと告げたのは、自分が遠くへ行くと言えなかったからです。予約した店は、せめてもの言い訳だったのかもしれません。

予約完了の画面を見つめながら、自分でも何をしているのだろうと思いました。前の日、僕は好きな人に付き合えないと告げたばかりなのに。

告げられなかった事情

彼女とは、共通の友人を通じて知り合いました。二人で会う時間が増えるほど、僕の中で彼女の存在は大きくなっていきました。けれど僕には、遠くの支社へ移ることがすでに決まっていたのです。中途半端な関係で彼女を縛りたくない。そう考えた僕は、帰り道で足を止めて「好きだけど付き合えない」と告げました。

彼女が「好きなのに、どうして」と聞いても、異動のことは言えませんでした。心配をかけたくないというより、去っていく自分を情けなく思われたくなかったのだと思います。だから僕は「ごめん、うまく言えない」と繰り返すことしかできませんでした。

振ったあとの予約

彼女と別れて家に帰っても、気持ちはちっとも晴れませんでした。これで彼女は自由になれる。そう自分に言い聞かせるほど、小さな後悔ばかりが積もっていきます。

気づけば僕は予約サイトを開いて、彼女が前から行きたがっていた店を探していました。そして「この前行きたいって言ってた店、予約取れたよ」とメッセージを送ったのです。付き合えないと言ったばかりなのに、矛盾しているのは自分でもわかっていました。

それでも、去る前にもう一度だけ彼女と過ごす時間がほしかった。今思えば、それは彼女のためではなく、僕自身のための予約でした。

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優しさという逃げ
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