
「この前は、ちゃんと挨拶できなくてごめん」と送るまでに、俺は3日かかった
コラム
信号が変わるまでのわずかな間に、俺は挨拶よりも先に足を動かしていました。感じが悪かったのは百も承知です。それでも、隠したいものがありました。
別れた彼女にもらった紺色の手袋を、俺はまだ通勤の鞄に入れたままにしています。
交差点で目をそらすまで
あの日、駅前の信号待ちで顔を上げると、正面に彼女が立っていました。3年ぶりでした。目が合った瞬間、俺は自分の両手を見ました。つけていたのは、付き合っていたころに彼女がくれた紺色の手袋です。とっさにポケットへ両手を突っ込んで、横の路地へ歩き出していました。そのまま角を曲がるまで、一度も振り返りませんでした。
捨てられなかった手袋
別れを切り出したのは俺のほうでした。残業続きで約束を何度も流し、彼女を駅で待たせてばかりでした。きちんと謝る勇気がなくて、先に関係のほうを終わらせたのです。最後に言えたのは「ごめん、俺が悪いから」だけでした。思い出の品を整理したときも、手袋だけは処分できませんでした。冬になるたびに使って、ほつれた指先を自分で縫って、3年が経ちました。
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送るまでにかかった3日間























