姉に理由も書かず5万を頼んだ俺が、母に口止めをしていたわけ

コラム

姉から返ってきたのは断りではなく、母さんから聞いたというメッセージでした。返せる当てもないまま月末と書いた俺は、その文を2度読み返します。

実家の風呂場には、水しか出ない蛇口と、業者から聞いた工事の金額だけが残っていました。父は出張中で、母は「戻るまで我慢する」と言うだけでした。俺はその場で業者に日取りを頼み、帰りの電車の中で姉の名前を開きました。

理由を書かずに送った1通

工事代は8万で、俺はカードで払いました。引き落としまでに用意できるのは3万です。母には、姉には言わないでほしいと頼みました。10年前、大学生のころに姉から借りた3万を、俺は返した記憶がありません。それを言われるのが分かっていたから、理由も内訳も書かずに「金貸して」とだけ送りました。少しして「5万。月末には返す」と足しました。月末に返せる当てはありませんでした。頭を下げる文を打つより、そのほうが楽だったからです。

既読のあとに来た1行

既読は付いたのに、返事はしばらく来ませんでした。断りの文を打っているのだろうと思い、俺はスマホを伏せて洗濯物を畳んでいました。届いたのは「お母さんから聞いた。給湯器なんだね」。母が姉に何かを送ったのだと、その文で分かりました。口止めをしたのは、姉に借りる理由を並べたら、10年前の話まで一緒に出てくると思ったからです。俺は「言うなって頼んだのに」と返しました。母に向けたつもりの文を、姉に送っていました。

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