
「少しくらい詰められる」優先エレベーターに割り込んだ女性と鳴り続けるブザー
コラム
誰も声を上げませんでした。開いたままの扉の中で鳴り続けた音と、彼女が最後に選んだ行動を、私は今も覚えています。
1台見送ったあと、ようやく乗り込んだエレベーターの扉が、閉まる寸前に外から押し戻されました。
1台見送ったあとで
最初に来たエレベーターは人でいっぱいで、ベビーカーの入る余地がありませんでした。私は優先エレベーターの前で次を待ち、乗り込むと、奥の方たちが体を寄せてくださったので、声をかけながらベビーカーを壁際に収めました。扉が閉まりかけたそのとき、外から手が伸びて、大きな紙袋が先にすべり込んできました。
「少しくらい詰められるでしょ。こっちは急いでるの」
紙袋を提げた女性が、体を斜めにして入ってきました。
鳴りはじめたブザー
「ベビーカーが、これ以上動かせないんです」
そう伝えた声に重なって、頭の上でブザーが鳴りはじめました。定員超過を知らせる音です。扉は開いたまま、音だけが続きます。奥の男性が足元を見直し、隣の学生も体を寄せ直しましたが、音は止まりませんでした。女性は降りずに、乗っている人たちへ助けを求めるような顔を向けていました。後から来た人の都合で、さらに場所を譲ることを求められました。
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後ろ向きの一歩

























