彼女の服を勝手に処分した俺が、「ダサいから」としか言えなかった本当の理由

コラム

二次会で耳にした一言と、捨てる前に彼女へ確認しなかった理由。悪ぶった言い方の後ろにあったものを、俺は彼女にまだ話せていません。

ゴミ袋の口を縛る音が、彼女のいない部屋に2回響きました。中身は、寝室のクローゼットから抜いた彼女の服です。これで彼女も喜ぶはずだと、俺はその時まだ信じていました。

二次会で聞こえた一言

きっかけは、友人の結婚式の二次会でした。彼女が席を外した隙に、同じテーブルの友人が笑いながら言ったのです。

「彼女、なんか古着っぽいね」

その場では、俺も黙って笑いました。彼女の服が古いことを、俺自身が前から気にしていたからです。色の落ちたデニムに、袖の形が歪んだワンピース。友人の言葉で、前から感じていたことを認めてもらえた気がしました。俺なら彼女をもっと垢抜けさせてやれる、という思い上がりが、そこにはありました。それなら俺が入れ替えてやろうと考えました。

彼女が実家に帰っている間にクローゼットから古い服を抜き、ゴミ袋2つにまとめて収集所に出しました。駅前の店で新しいワンピースを2着買い、紙袋のまま冷蔵庫の横に置きました。

口から出たのは、正反対の言葉

実家から戻った彼女が寝室のクローゼットを開ける音がして、しばらくしてリビングに出てきました。「ねえ、ここにあった服は?」と聞かれた時、俺はテレビを見たまま答えました。

「お前の服、ダサいから捨てたわ」

自分でも、笑い方がおかしいと分かっていました。本当は、二次会で聞いた言葉と、それを恥ずかしいと思ってしまった自分のことを言うべきでした。でも、お前の格好が恥ずかしかったとは、どうしても言えませんでした。悪ぶった言い方の方が、俺には楽だったのです。

「あのデニム、お母さんのだったんだよ」

「知らないって。そんなの言われてないし」

「ワンピースも。あれ、私が縫ったの」

「……古いやつしか捨ててないよ」

俺がリモコンを置くと、彼女は寝室に戻り、しばらくしてサンダルのまま玄関を出ていきました。

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聞かなかった理由
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