「ワレモノ」の箱を滑らせた作業員、空き箱の底で知った理由

コラム

最後まで解けなかった警戒

新居での搬入は、拍子抜けするほど順調でした。作業員はあの箱を両手で水平に持ち、歩幅を狭めて廊下を進み、台所の床に音を立てずに置きました。見られているからそうしているのだろうと、私はまだ思っていました。全部の荷物が運び込まれ、確認書にサインをして、2人を見送りました。若いほうの作業員は去り際にもう一度深く頭を下げましたが、私は短くお礼を言っただけでした。

そして...

荷ほどきは数日後になりました。祖母の皿は、1枚も欠けていませんでした。ほっとして空の箱をたたもうと裏返したとき、底に目が留まりました。私が貼ったテープの上から、幅の広い布テープが、十字に貼り足されていたのです。あの日の荷台が頭に浮かびました。持ち上げなかったのは、持ち上げられなかったからかもしれません。中身はあれだけ包んだのに、底に貼った私のテープは、細い1本きりでした。新居の引き出しには、あの十字と同じ幅の布テープを1本、買い足して入れてあります。

(30代女性・事務職)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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