結婚式の延期を切り出した俺が、彼女に言えないまま通い続けた場所

コラム

「まだ君に娘を任せる気にはなれん」。その一言を覆せないまま、式の日だけが近づいていきました。俺が選んだのは、彼女を悲しませるやり方でした。

紙袋の中のどら焼きは、もう何度目になるのか数えるのをやめていました。

認めてもらえなかった挨拶の日

彼女との結婚を決めて、初めて実家へ挨拶に伺った日。お義父さんは俺の目を見ないまま「まだ君に娘を任せる気にはなれん」と言いました。隣で彼女は「気にしないで」と笑ってくれたけれど、俺は出されたお茶に口をつけられないまま、その家を後にしました。準備は進んでいるものの、招待客の名簿には、いちばん座ってほしい人の欄だけが空いたままでした。俺は彼女に言わないまま、休みのたびにお義父さんのもとへ通うと決めました。手土産は、実家の最寄りの商店街で見つけた和菓子屋のどら焼き。お義父さんの好物だと、お義母さんがこっそり教えてくれました。

式の7日前に選んだ言葉

通っても、お義父さんは首を縦に振ってはくれませんでした。式の7日前、俺は決めました。一番大事な席が決まらないまま式を挙げるのではなく、延期して、心から祝ってもらえる日を待つと。ただ、彼女に事情を話す勇気はありませんでした。話せば彼女は、自分が我慢すればいいと式をそのまま進めてしまう。それ以上に、何度通っても認めてもらえない自分を知られるのが怖かった。だから俺が口にできたのは「やっぱり延期したい」と「理由はまだ言えない。でも、信じてほしい」だけでした。仕上げたばかりの席次表を封筒に戻す彼女の手を、俺はまっすぐ見られませんでした。

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