
昇進を言えずにいた俺が、彼女に呼び出された席でようやく開いた手帳
コラム
延期の連絡を送るたび、返ってくる言葉は短くなっていきました。彼女に呼び出されたのは、伝えられないままの計画が形になり始めた頃でした。
不動産サイトの保存リストが、俺のスマホには20件を超えて並んでいました。
言えないまま増えていく延期
彼女と付き合って2年。そろそろ一緒に住みたいと考えていた頃、上司から昇進の候補に入っていると告げられました。給料が上がれば、部屋の選択肢も広がるはずです。ただ、確定までは結果を出し続ける必要があり、残業と休日出勤が一気に増えました。確定してから胸を張って伝えたい。その考えが、俺の口を重くしました。誘いを断るたびに打つのは「またこんど」という短い返事で、理由を聞かれれば「ごめん。今は仕事が大事な時期なんだ」とくり返すだけです。久しぶりに会えたカフェでも、面談の日程を知らせる通知が入り、俺は手帳を閉じて先に席を立ちました。後ろめたさで、彼女の顔をまともに見られなかったからです。
延ばした先で失いかけたもの
延期の連絡を送るたび、返信までの時間は延びていきました。既読はつくのに、届く言葉は短くなる。今頃あきれさせているのだろうか。想像はしても、確かめるための連絡を打つ勇気が出ませんでした。断られて計画ごと壊れるのが怖かったのだと、今なら分かります。仕事帰りの電車で保存リストだけが増えていき、彼女に伝える言葉は1つも形になりませんでした。
次のページへ
呼び出された席で開いた手帳


























