
「音痴は遺伝よ」と笑われて20年、私が結婚式で母に贈った1曲の正体
コラム
マイクを持つ番
お色直しのあと、司会が私の名前を呼びました。両親への手紙の代わりに、と頼んでおいた時間です。マイクを両手で持って、母の席を見ました。「この曲は、小さい頃にお母さんが歌ってくれた子守唄です」。演奏が始まり、最初の音から外れたのが自分でもわかりました。それでも歌い続けると、会場から少しずつ手拍子が重なっていきます。親族席では、母が真っ先に立ち上がって手を叩き、おしぼりを目元に当てていました。歌い終わるまで、私はその姿から目を離しませんでした。
そして...
お開きのあと、控室で母と2人になりました。「いい子守唄だったわ。昔と同じで」。私は短くうなずいて、荷物の方へ向き直りました。それ以上の言葉は、まだ探せていません。翌日、新居の段ボールを開けながら、私はあの子守唄を口ずさみました。途中から夫も、覚えたばかりの旋律を重ねます。2人とも音を外しましたが、私は最後まで歌うことをやめませんでした。
(20代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)



























