言えなかった「ごめんなさい」を抱えて出た披露宴で、待っていたのはあの子守唄でした

コラム

進行表になかった1曲

司会が娘の名前を呼んだとき、打ち合わせで見た進行表にはなかった時間だとわかりました。「この曲は、小さい頃にお母さんが歌ってくれた子守唄です」。前奏の途中から、もう旋律を追えました。私が下手なりに歌い、娘が覚えていてくれた歌です。音程は、確かに親子でよく似ていました。それでも会場は温かな手拍子に包まれて、気づけば私は真っ先に立ち上がって手を叩いていました。目元は、おしぼりで押さえました。遺伝したのは音程ではなく、口をつぐむ癖の方だったのだと、やっとわかりました。

そして...

お開きのあと、控室で娘と2人になりました。練習した言葉は、またも引っ込みました。代わりに出たのは「いい子守唄だったわ。昔と同じで」。娘は短くうなずいて、荷物の方へ向き直りました。それで十分だとは思っていません。帰りの電車で、私は口の中であの旋律をなぞっています。次に会う日のための練習を、まだ続けています。

(50代女性・パート)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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