
「ここを空けておいてもらえませんか」新婦の伯母に頼まれた私→「修正をお願いします」と言う新婦に、理由を言えなかった
コラム
「修正をお願いします」と新婦から届いた写真を前に、打ち込みかけた返事を消しました。約束を守れば怒られ、破れば裏切る。答えを出せないまま、最終打ち合わせを迎えます。
予約の入っていないロビーに、新婦の伯母さまが1人で立っていました。手にしていたのは、新婦さまから見せてもらったという席次の一覧。続柄の欄を指して、こう言われました。「ここを空けておいてもらえませんか」
「育ての親」と分かる書き方で
初回の打ち合わせで、新婦さまは親族の名簿を渡しながら、1人だけ念を押しました。父の海外赴任で両親が家を空けていたあいだ、5歳から高校を出るまで自分を育てた母の姉がいる。続柄の欄は、育ての親だと分かる書き方にしてほしい。名簿の余白に印を付け、候補をいくつか用意するつもりでいました。
続柄の欄は、揉めやすい場所です。ひらがな1つで角が立ち、当日にやり直しはききません。念入りに、と自分に言い聞かせていた矢先に電話が入りました。
新婦の母親からでした。
「姉に、母と書いてやってください。私には、それを書く資格がないので」
娘には相談せず、私にだけ伝えたい、とも。あの子が熱を出した日、自分は電話にも出られなかった。姉の名前の上に何を書いても、それだけは変わらない。電話の向こうの声は、最後まで落ち着いていました。新婦母の続柄が2つ並ぶ席次表に前例がないわけではないのですが、本人の了承なしには動かせない話です。保留のまま、名簿の印を丸で囲みました。
空けておいてほしい、という頼み
その数日後、伯母さまがロビーに来られたのです。
「妹から、何か聞いていますね」
座る前にそう言われ、うなずくしかありませんでした。
「母とは書かないでください。あの子には母親がいます。かといって伯母と書けば、あの子を育てた日のことはどこにも残りません。どちらも違うから、空けておいてほしいんです」
空欄で印刷した席次表を、見たことがありませんでした。会場の前例、親族の目、当日の説明。頭のなかで並べた反対の理由を、伯母さまは全部聞き終えてから言いました。
「新婦育ての母、という書き方もあります」
「それは、あの子が決めることです。私が先に決めたら、また取ることになります」
「あの子が呼ぶ名前で呼ばれるまで、空けておきたい。それだけです。理由は、私から話すまで伝えないでください」
新婦さまの依頼を、私の一存で変えることはできません。ただ、最終の印刷までにはまだ日があります。校正の段階でいったん空欄にし、新婦さまご本人の確認を待つことにしました。妹さんの頼みも、お姉さんの頼みも、同じ人を大事にしている点では重なっている。それを知ったうえで、新婦さまに決めてもらいたかったのです。
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新婦さまに言えなかったこと


























