
「ここを空けておいてもらえませんか」新婦の伯母に頼まれた私→「修正をお願いします」と言う新婦に、理由を言えなかった
コラム
新婦さまに言えなかったこと
校正紙が届いたその日に、新婦さまから写真付きのメッセージが来ました。
「伯母の続柄が入っていません。修正をお願いします」
修正します、と返せば済む話です。打ち込みかけた文を消して、こう送りました。
「こちらは最終のお打ち合わせでご説明させてください」
打ち合わせ室に入るなり、新婦さまは校正紙を開いて空欄を指しました。
「伯母の続柄が抜けています」
「そちらは、ご本人からのご希望です」
目を合わせられず、席次表を見たまま答えました。
「打ち合わせで、育ての親と書きたいって伝えましたよね」
「はい。承っております」
「本人って、伯母がですか」
「申し訳ありません。事情は、伯母さまご自身からお伝えいただくお約束になっておりまして」
理由を言えば、伯母さまとの約束を破ることになる。言わなければ、新婦さまは怒ったまま帰る。選べたのは、怒りの向き先を自分に引き受けておくことだけでした。校正紙を鞄に戻す音を聞きながら、テーブルの下で手を組み直していました。
1人になった打ち合わせ室で、名簿の余白に付けた印を見ました。丸で囲んだまま、書き込みのない印。母親に電話をして事情を話すことも考えて、やめました。この欄をめぐって動いた3人のうち、まだ何も知らないのは新婦さまだけです。私が増やしていい人数ではありませんでした。
伯母さまに電話を入れました。
「たぶん、今から行きます。あの子が来たら、話します」
そのあとの台所で何があったのかを、私は知りません。次の確認の電話で新婦さまが言ったのは、「空欄のままで大丈夫です」の一言だけでした。それ以上は、こちらからも聞いていません。聞く権利が自分にないことは、はっきりしていました。
そして...
当日の謝辞で、新婦さまは原稿にない一言を足しました。
「席次表の空いたところは、私がずっと呼んできた名前のための場所です。おばちゃん、ありがとう」
親族席の伯母さまは、テーブルの席次表に手のひらを重ねたまま、頭を下げていました。
それ以来、初回の打ち合わせで続柄を伺うとき、必ずこう聞いています。「その書き方で、ご本人はよろしいですか」。空欄のまま印刷した席次表は、今もあの1組にしかありません。
(30代女性・ウェディングプランナー)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)



























