
「片づけたら?」と私の本棚を指す夫→手放した本を、全部買い戻していたのは彼でした
コラム
段ボールの中に並んでいた背表紙
ふたを開けると、見慣れた背表紙が並んでいました。学生時代の文庫も、表紙で選んだ画集も、私が紙袋に詰めた本ばかりでした。どの裏表紙にも、駅前の古書店の値札が貼ってありました。床に並べて数えると18冊で、1冊も欠けていませんでした。
箱の底には、同じ店のレシートが折りたたんで入っていました。日付は、私が本を売りに行った翌日でした。
本を並べた床の前に座りこんで、毛布のことはすっかり頭から抜けていました。玄関の鍵が回る音がして、文庫を1冊持ったまま廊下に出ました。
「この本、どうしたの?」
夫は私の手元を見てから、開いたままの自分の部屋をのぞきこみ、床に並んだ本に目をやりました。少し間があって、返ってきたのは短い言葉でした。
「それは、もうちょっと待って」
夫は床の本を箱に戻し、最後に私の手から文庫を受け取ると、クローゼットの上の段へ箱を押し上げました。
そして...
あれから数日、夫はいつもどおりでした。食卓では仕事の話をして、休みの日にはソファで新聞を広げていました。リビングの本棚の隙間も、埋めないままにしていました。
片づけたらと言ったのは夫でした。その夫が、私の手放した本を1冊残らず買い戻して、何を待てと言っているのでしょうか。
(30代女性・事務職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)



























