
妹への遺産を「不要だ」と言い放った俺が、父の遺言書を前に言葉を失った理由
コラム
親父が書いていたこと
遺言書の朗読が始まり、財産の大部分が妹の名前で記されていると聞いたとき、俺は自分の耳を疑った。続いて読まれた親父の手紙が、さらに俺を追い詰めた。
「長男には十分に甘えさせてもらった。だが娘のことは、ずっと心配してきた。嫁に出た女には何もいらないと、息子が何度もわたしに言い聞かせようとした。それを聞くたびに、娘への申し訳なさが増した」
親父はすべて知っていた。俺が妹を外そうとしていたことも、そのために親父を説得しようとしていたことも。そのうえで、あのような形で答えを残した。テーブルの上で、指先が落ち着きなく動いていた。何か言わなければと思うのに、声が出なかった。
そして...
事務所を出て、俺はしばらく車の中で動けなかった。親父のそばにいた時間の長さが、そのまま正しさにはならなかった。そのことがじわじわと染み込んでくるようで、やけに苦しかった。
妹へ言った言葉を取り消すことも、あの五年間を消すこともできない。ただ、親父が最後に残した手紙は、俺への怒りじゃなかったと思いたい。そう繰り返しながら、帰り道をずっと走っていた。
(40代男性・警備職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)



























