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運動会のリレーで抜かされた息子の「お母さん、ごめんね」に、私は何も返せなかった

コラム

息子は足が遅い子でした。それは誰より私が知っていました。リレーの選手に選ばれたと嬉しそうに報告する息子を「頑張ろうね」と送り出したあの日、思ってもみなかった言葉が返ってきたのです。

クラスで一番遅い子

小学3年生の息子は、かけっこではいつも後ろのほう。でも走ること自体は好きな子でした。リレーの選手に選ばれたと聞いたとき、帰ってきた息子の目はきらきらしていました。「最終走者なんだ」と誇らしげに言う姿に、「すごいね」と返しながらも胸の奥がきゅっと締まりました。

足の速い子たちと一緒に走って、つらい思いをしないだろうか。その不安を、笑顔の裏で飲み込んでいたのです。

廊下で聞こえた声

個人面談の日、廊下で自分の番を待っていました。教室の扉越しに、声が聞こえてきたのです。

「足を引っ張る子を入れないでほしいんです」

手に持っていたスリッパ袋をぎゅっと握りしめました。誰がそう言っているのかは、声ですぐにわかりました。先生が何か返しているのは聞こえましたが、その内容は耳に入ってきませんでした。

教室から出てきたそのお母さんと目が合いました。私は会釈だけ返しました。顔がこわばっていたと思います。家に帰っても、あの一言が頭の中でずっと繰り返されていました。

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