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「お疲れさま」としか言えなかった卒業式の日、俺が飲み込んだ言葉

コラム

後方の席

妻に「卒業式、来てくれる?」と聞かれたとき、「仕事があるから」と答えました。嘘でした。有給はとっくに申請していました。ただ、4年間何もしなかった人間が最後だけ駆けつけるのは、都合がよすぎると思ったのです。 

しかし卒業式当日、子どもたちに「お父さんも行こうよ」と言われたとき、断る理由がなくなりました。会場の後方に座り、壇上に向かう妻の姿を見ました。目が合いそうになって、とっさに顔を逸らしました。

そして...

妻が卒業証書を受け取る姿を見たとき、涙が止まりませんでした。娘が背中をさすってくれましたが、俺が泣いている理由は感動だけじゃありませんでした。4年間、隣にいながら一度も「頑張れ」と言えなかった自分が情けなかった。大学に行ける妻が羨ましかった。そして、その醜い感情のせいで「お金の無駄」などと言った夜のことが、ずっと胸に刺さったままでした。 

式のあと、俺は「お疲れさま」とだけ言いました。本当は「ごめん、ずっと応援したかった」と言いたかった。でも4年分の沈黙のあとに発せるほど、俺は器用な人間ではありませんでした。帰り道、妻は何も聞きませんでした。あの涙の理由を聞かないでいてくれた優しさに、また泣きそうになりました。

(40代男性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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