
孫ほどの若い子に席を譲ってもらった朝、私はその子の青ざめた横顔を忘れられなかった
コラム
ドア際で揺れる、青白い横顔
発車してしばらく、ふと顔を上げると、彼女はドア付近に立っていました。つり革に掴まりながら、額にハンカチを当てています。電車が揺れるたびに、その体も力なく揺れていました。横顔が青ざめているのに気づいたのは、そのときです。あの子は、目を閉じていたわけではなく、つらかったのだ。それでも私の一言で、すぐに立ち上がってくれた。私は何をしているのだろうと思いました。夫との喧嘩の苛立ちを、何の関係もないあの子にぶつけてしまった。それも、皮肉という一番卑怯な形で。
そして...
私の降りる駅と、彼女が降りた駅は同じでした。ホームに降りる彼女の足取りは少しふらついていました。私は意を決して「あの」と呼び止めました。 「こっちこそごめんね」 そう言って、頭を下げました。彼女は驚いた顔で「いえ……」とだけ返してくれました。
家に帰る道すがら、私は何度もあの青ざめた横顔を思い出していました。年を重ねるほど、若い人の事情が見えなくなっていく自分が情けなくて、けれど最後にひとこと言えてよかったとも思います。次に席を譲ってもらう日があれば、まずきちんと「ありがとう」を言える私でいたい。そう思った朝でした。
(70代女性・主婦)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)


























