
満員電車で背中に当たる何かにいら立った私が、降り際に深く頭を下げられた話
コラム
そこにいた小さな子
後ろにいたのは、大きな荷物を背負った人ではありませんでした。男性の胸元には抱っこ紐があり、その中で赤ちゃんが眠っていました。
私に当たっていたのは、抱っこ紐の留め具と、赤ちゃんを守るように添えられた男性の腕でした。男性は揺れる車内で体を丸め、人混みの圧が赤ちゃんへ向かわないように支えていました。
私はそれまで、後ろの人が自分のことしか考えていないのだと思っていました。でも、その人は限られたスペースの中で、赤ちゃんをかばうことだけに必死だったのです。
そして...
降りる駅が近づいたとき、私は少しだけ立ち位置を変えました。人の流れが赤ちゃんへ向かわないように、自分の背中で受ける形にしました。
ホームに降りようとしたとき、後ろの男性が私に向かって頭を下げました。「ありがとうございました。助かりました」と言われ、私はうなずくことしかできませんでした。
さっきまで邪魔だと思っていたものの先に、小さな子を守る腕がありました。見えない事情に気づく前にいら立っていた自分を、帰り道に何度も思い出しました。満員電車で見えているものは、いつも全部ではないのだと思います。
(30代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)


























