
「疲れたから、あとよろしく」海水浴で全部押しつけてきた彼に、同じ言葉を返してみた
コラム
軍手を外した私は、返事を待たずに目を閉じました。聞こえてきたのは文句ではなく、炭に水をかける音と、洗い場を往復する足音でした。
浜辺を出てすぐの赤信号で横を向くと、助手席の彼はもう口を開けて眠っていました。
砂まみれのシートと、助手席の寝顔
付き合って2年になる彼と、車で海水浴に出かけた日のことでした。泳いでいる間、彼は誰よりはしゃいでいました。ところが帰り支度が見えてくると、タオルを首にかけたまま言ったのです。
「疲れたから、あとよろしく」
私が返事をする前に、彼は助手席に乗り込みました。パラソルを抜き、砂だらけのレジャーシートを畳み、クーラーボックスを1人で車まで運びました。行きも帰りも、運転は私でした。渋滞の間も、隣の寝顔は波の音の続きのように穏やかなままでした。私だって、同じ海で同じだけ泳いだのに。
「ありがとう」の軽さ
彼の家の前に着くと、彼は伸びをして降りていきました。
「ありがとう、助かった」
悪気のない顔でした。私は短く応えて、車を出しました。帰宅してから、文句のメッセージを打っては消しました。言葉で伝えても、きっと軽い謝罪で流されて終わる。そう考えた私は、彼が前から楽しみにしていた日帰りバーベキューの誘いに、あえて乗ることにしました。同じ景色を、彼にも見てもらうためです。
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軍手を外して、目を閉じた
























