
「なんで俺の分だけ大盛りなの?」と聞かれた私が、茶碗を替えられなかった理由
コラム
器が小さいからそう見えるだけだと答えれば、すぐに済む話でした。それでも数秒、返事に迷ったのは、息子がその茶碗のことを覚えていないと分かったからです。
息子の茶碗にごはんをよそう量を、私は昔から変えていませんでした。
同じだけよそっても、息子のほうだけ高くなります
息子がこの家を出て、何年か経ちました。
月に1回くらいのペースで顔を出しては、2人でごはんを食べて帰っていきます。
その日も、いつもの茶碗を2つ出しました。
よそう量は同じです。それでも息子の茶碗は私のものより少し小さいので、ごはんが縁より高くなります。
私はそれを知っていながら、器を替えないまま何年も使ってきました。
食卓へ運び、炊飯器のほうへ戻ろうとしたとき、息子が自分の茶碗を見ているのが分かりました。
器が小さいから、と言えば済む話でした
「なんで俺の分だけ大盛りなの?」
軽い調子でした。
私は息子へ目をやりました。
「器が小さいからよ」
そう答えれば、それで終わる話です。
ただ、その瞬間、息子が自分の茶碗をただの食器として見ていることに気づきました。
覚えていないのだと思いました。
何を言えばいいか決められないまま数秒が過ぎて、私は、
「足りなかったら言いなさいね」
と笑いました。
答えになっていないことは、自分でも分かっていました。
それに、茶碗が小さいと言えば、次に来るとき新しいものを買ってきそうな気もしていました。
私はまだ、それを替えるつもりになれませんでした。
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あの茶碗を選んだのは、息子自身でした



























