
「わかった」しか返せない私が、娘の帰省の前日から仕込んでいたもの
コラム
駅のロータリーで
当日、私は約束より早めに着いて、ロータリーの一番手前に車を停めました。改札から出てきた娘に掛けた言葉は「おかえり」だけ。本当は、よく帰ったな、と続けたかったのですが、口が動きませんでした。家の鍋では、前の日から仕込んだおでんが煮えていました。娘が冷蔵庫の紙の前に立ったとき、私は風呂を見てくるふりをして台所を離れました。何と言われても、うまく答えられる気がしなかったからです。
そして...
帰り際、娘に言われました。
「メッセージ、わかっただけだと、ちょっと寂しいよ」
返した言葉は「そうか。わかった」だけ。我ながら情けない返事でした。数日後、家に着いたという知らせに、私は打ちかけの長文をまた消して、代わりに短く一言を足しました。
「わかった。気をつけて」
今も長い返事は書けません。ただ、冷蔵庫の紙の言葉は、これからも増やしていくつもりです。
(50代男性・会社員)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)




























