
客の食器の箱を荷台で滑らせた俺、1人で足した作業の理由
コラム
積み込みが終わったあとで
出発前、俺は荷台に残りました。あの箱の前にしゃがみ、資材袋から幅の広い布テープを出して、底へ十字に貼り足しました。お客さんの荷物は、断りなく開けるわけにはいきませんでした。外から支えるくらいしか、俺にできることはありませんでした。走行中に底が抜ける箱を、そのまま新居まで運びたくありませんでした。言えなかった分の埋め合わせのつもりでしたが、黙ってやるなら、それはただの自己満足でもありました。
そして...
新居への搬入では、あの箱だけを両手で抱えて、水平のまま、足元を確かめながら運びました。お客さんの視線は、最後までやわらぎませんでした。引き渡しで改めて頭を下げましたが、テープのことは結局言えないままでした。今は、梱包に不安のある箱を見つけたら、運ぶ前にその場でお客さんに伝えるようにしています。言い訳に聞こえてもかまいません。先に一言伝えるだけで、荷物も、運ぶ側の手も守れると、あの日の視線に教わったからです。
(20代男性・引っ越し作業員)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)

























