あの子の話になると反応を抑えていた私→半年後、「あの坂の花壇」で全部知られました

コラム

悪いことをしているわけではありません。それでも、また真似したの、と冗談でも言われるのが嫌で、あの子が話し始めると必要以上に反応しないようになっていました。

あの子が話し始めると、私はいつもより少しだけ窓を見る時間が長くなっていました。興味がなかったわけではありません。むしろ逆でした。あの子が何気なく話したことを、私は半年の間にいくつも自分の生活へ持ち帰っていました。

最初に真似したのは、帰り道でした

学生時代からの4人で、月に1度集まっています。
半年前、その子が通勤の話をしました。
家の最寄り駅ではなく、1つ手前で降りて、坂を上って歩いて帰っているという話です。
「歩くと考えごとが整理されるんだよね」
私たちの家は同じ駅が最寄りです。
そのころ私は職場の担当が変わったばかりで、帰ってからも仕事のことを考えていました。
次の週、試しに同じことをしてみました。
歩く距離は増えます。
それでも、坂を上がりながら考えていると、家に着くころには頭の中が片づいていました。
次の集まりで、私もやってみたよ、と言えばよかったのだと思います。
でも、言えませんでした。
いきなり同じことを始めたと言ったら、真似したと思われそうな気がしたからです。

1つだけではなくなりました

それだけなら、まだ言えたかもしれません。
別の集まりで、その子が、
「昼休みだけスマホ見ないようにしたら、午後が少し楽になった」
と話しました。
私はそれも試しました。
しばらくして、あの子がおすすめしていた店にも1人で行きました。
気づけば、あの子から聞いたことを何度も自分の生活へ取り入れていました。
悪いことをしているわけではありません。
それでも、また真似したの、と冗談でも言われるのが嫌でした。
だから、あの子が何か話し始めると、必要以上に反応しないようになりました。
興味を持って続きを聞けば、また試したくなるかもしれません。
すでにやっていることなら、私も、と口にしてしまうかもしれません。
「そうなんだ」
と返して、グラスに手を伸ばす。
ときどき窓を見る。
話を嫌がっているように見えるかもしれないとは思いましたが、そのころの私は、何も言わないほうを選んでいました。
ほかの2人には隠すことがないので、普通に質問できます。
その差が自分でも分かるようになっていました。

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