
「なんで俺の分だけ大盛りなの?」と聞かれた私が、茶碗を替えられなかった理由
コラム
あの茶碗を選んだのは、息子自身でした
息子がその茶碗を選んだのは、中学に上がった年です。
それまで使っていたものを割ってしまい、一緒に新しい茶碗を買いに行きました。
売り場で息子が手に取ったのが、今も使っているあの茶碗です。
大人用より小ぶりだったので、
「もう少し大きいほうがいいんじゃない?」
と言いました。
それでも息子は、
「これがいい」
と言って戻しませんでした。
家を出るときには、鍋も皿も箸も一式持たせました。台所から息子のものが少しずつ減っていったなかで、あの茶碗だけが実家に残りました。
何年か前、そろそろ替えてもいいだろうと思って新しい茶碗も買いました。
けれど包みを開けないまま、食器棚の奥にしまっています。
食事のあと、洗い終えた茶碗を見比べた息子が、
「これ、俺のだけ小さいんだな」
と言いました。
私は台所の入り口から、
「同じだけよそってるのよ。ずっとその茶碗よ」
と返しました。
「自分で選んだのよ」とは言えませんでした。
覚えていないことを責めたいわけでもありませんでした。
ただ、私だけが覚えているままでもいいような気がしたのです。
そして...
あれからも、盛る量も茶碗も変えていません。
次に来たとき、息子は量のことを聞かず、高くなったごはんの上から先に箸をつけていました。
食事が終わったあと、私は新しい茶碗の包みを食器棚のいちばん奥へ戻しました。
いつか今の茶碗が欠けたり、割れたりしたら、そのときは新しいものを出すつもりです。
それまでは、中学生だった息子が自分で選んだ小さな茶碗に、同じ量のごはんをよそい続けようと思っています。
(60代女性・パート勤務)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)





























