弟から10年ぶりの「金貸して」→断りの文を打つ私に、母から同時に届いた通知で送信をやめました

コラム

断りの文を打っていたところで、母から届いた通知が画面に重なりました。私はその文を消して、別のメッセージを送ることにします。

洗い終えた皿を拭いている途中で、スマホが続けて2度鳴りました。画面に出ていたのは弟の名前と、たった一言の文面。弟から何かを頼まれるのは、10年ぶりのことでした。

「金貸して」の後に続いた2通目

弟とは、実家の集まりの連絡をメッセージで交わす程度の間柄です。1通目は「金貸して」だけ。少し間を置いて「5万。月末には返す」と続きました。10年前、大学生だった弟に貸した3万は、まだ返ってきていません。あのときも同じ言い方でした。私は皿を置き、入力欄を開きました。「10年前の分も返ってきてないよね」。そこまで打って、その先の言葉を選んでいました。

同じ画面に重なった母の名前

送信を押す前に、画面の上から通知が降りてきました。母からです。「今日からお風呂がまた沸くようになりました。あの子が業者さんまで呼んでくれて、お金も立て替えてくれたの」。実家の給湯器が壊れていたことを、私はそのとき初めて知りました。父の出張中で、母は私に心配をかけまいとしたのだと思います。弟が求めた5万と、母の書いた立て替えという言葉が、同じ画面の上に並んでいました。私は打ちかけの文を最初から消し、代わりにメッセージだけ送りました。「お母さんから聞いた。給湯器なんだね」。既読はすぐに付きましたが、返事はなかなか来ませんでした。

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