
「お前の稼ぎじゃ無理」と言い切った彼の前で、私が契約者の欄に名前を書いた理由
コラム
スマホに表示した数字
スマホを取り出して副業の入金履歴を開き、彼にだけ見えるように傾けてカウンターに置きました。
「副業してるの。最近、けっこう良い感じなんだ」
彼は画面に顔を近づけ、ゆっくりスクロールしていきました。
落ち着いてから見せるつもりだった画面を、こんな形で出すことになりました。
スマホを私のほうへ戻した彼は、口を開きかけては閉じるばかり。
その返事を待たずに、担当者へ向き直りました。差し出された申込書の契約者の欄に、自分の名前を書き入れました。
ペンを置いたとき、隣の彼はまだ間取り図に目を落としたままでした。
そして...
店を出てから駅まで、彼は私の半歩前を歩いていました。
改札の手前で立ち止まり、「帰ったら、話したいことがある」と言いました。担当者の前とは別人のような、小さな声でした。
免許証を財布に戻しても、すっきりしないままでした。彼の返事を聞かないまま部屋は決まり、あの一言も取り消されていない。
普段は名前で呼ぶ彼が、どうしてあのときだけ「お前」と言ったのか。その理由を、私はまだ知りませんでした。
(20代女性・書店員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)



























