先輩の悪口を本人に誤送信した俺→返ってきた返信には、俺が見つけられなかったミスの場所がありました

コラム

送れたのは、何度も打ち直した末の短い謝罪だけでした。先輩の返信を読み返すうちに、あの電話で先輩が何を引き受けていたのかを、俺はやっと知ります。

送ったばかりの吹き出しの横に、既読の表示がついていました。同期に愚痴を送ったはずなのに、画面の上に出ていたのは先輩の名前です。自分が何をしたのか、すぐには飲み込めませんでした。

電話を代わられた日

発端は、取引先からの1本の電話でした。金額が合わないと言われ、手元の見積もりを何度めくっても、どこがずれているのか分からない。黙り込んだ俺の横で、先輩が「代わるね」と電話を引き取りました。

先輩は謝りながら数字を確かめ、手際よく話をまとめていきました。隣で聞いていても、何を直すと約束したのか俺には追いつけませんでした。電話を返されたとき、頭を下げるのが精いっぱい。フロア中の視線が、自分に刺さっている気がしました。

先輩にはこれまでも「確認した?」と何度も声をかけられてきました。助けられるたびに、自分の出来なさを並べられているようで、素直にお礼が言えなかったのです。

画面の上に残っていた名前

帰りの電車で、先輩からメッセージが届きました。

「今日はお疲れさま。電話の件は気にしなくていいからね」

気遣いだと分かっていても、返事を打つ気にはなれませんでした。読み終えて画面を閉じたつもりで、同期への愚痴を打ち始めました。

「今日のおばさん、マジでウザかったわー」

送信してすぐに既読がつき、画面の上に先輩の名前が残っていることに気づきました。取り消そうかとも考えましたが、読まれたあとでは意味がありません。

名前で呼ばずにあんな言葉を選んだのは、自分の情けなさを同期に笑い飛ばしてほしかったからでした。

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