
改札の前で彼女を50分待った。手の中で冷めていく缶を握ったまま、俺が思い出していたこと
コラム
改札の前で答えられなかった問い
50分が過ぎたころ、彼女が早足でこちらへ向かってくるのが見えました。缶を差し出して「おつかれ」と言うと、返ってきたのは「ごめん、連絡できなくて」。
「いいよ」
本心でした。待ちながら、講座で手を離せない理由はいくらでも考えられたからです。
けれど、続いた彼女の言葉で、何も忘れられてなどいなかったと分かりました。
「待つのが女の仕事じゃなかったっけ」
あれは父の言葉で、本当は自分が一番嫌っていた。そう言えば、言い訳にしか聞こえない気がしました。人が行き交う改札の前で、ちゃんと謝れる自信もありません。足元に目を落としたまま、口から出たのは「寒いし、帰ろう」だけ。また逃げたのだと、階段へ向かいながら分かっていました。
そして...
階段を下りる途中、隣で彼女が缶を開ける小さな音がしました。
家に着いてから、チャットの画面を開きました。何度か打っては消して、送ったのはこの文面です。
「半年前に言ったこと、ちゃんと謝りたい。次の講座のあと、少し時間をもらえる?」
スマホを伏せずにテーブルに置き、返事を待ちました。既読がつくまでの時間が、改札の前の50分と同じくらい長く感じられました。
(20代男性・営業職)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)



























