
彼女の上司に「どうも」とだけ頭を下げた俺→あの場で「彼氏です」を飲み込んだ理由
コラム
答えようと思えば、すぐに答えられた。それでも口をつぐんだのは、彼女が会社の話をするときの、少し疲れた顔を覚えていたからです。
両手のエコバッグが、歩くたびに膝に当たっていました。隣を歩く彼女は、スーパーを出てからほとんど口を開きません。原因が自分の一言にあることは、分かっていました。
先に答えるのは彼女だと思った
レジの列で後ろから「あれ?」と呼び止める声がしました。振り返った彼女の様子から、職場の人だろうと見当がつきました。その人は俺のほうを見て、笑いながら言いました。
「もしかして、彼氏?」
答えようと思えば、すぐに答えられました。でもその前に、彼女の口から「あ、えっと……」がこぼれるのが聞こえて、言いかけた言葉を引っ込めたのです。結局、小さく頭を下げて「どうも」とだけ言いました。
1か月前に聞いた話
頭にあったのは、1か月ほど前に彼女から聞いた話でした。部署の人の恋人の話が、本人の知らないうちに社内に広まっていたと、少し疲れた顔で教えてくれたのです。
「だから、会社ではプライベートの話はあんまりしないようにしてるんだ」
職場で俺のことをどこまで話しているのか、聞いたことはありません。もし誰にも言っていないなら、俺が「彼氏です」と言った途端、彼女が会社で質問攻めにあうかもしれない。誰に何を話すかは、彼女が決めることだと思いました。
もう1つ、自分でも認めたくない理由があります。洗いざらしのパーカーに、長ねぎのはみ出たかご。この格好で「彼氏です」と言ったら、彼女の上司の目にどう映るのか。そんなことも、少しだけ気にしていました。
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重い袋を2つとも持った帰り道

























