
「もしかして、彼氏?」と上司に聞かれた日。隣の彼が返したのは「どうも」の一言だけ
コラム
帰り道、いつもは軽いほうの袋を渡してくれる彼が、2つとも自分で提げて先を歩きました。あの場で何も言わなかった理由を、聞けないまま部屋に着いてしまって。
レジ待ちの列で、かごからはみ出た長ねぎが彼の腕に当たっていました。休日に近所のスーパーへ2人で行くのは、私たちのいつもの流れです。その日の買い物が少し苦いものになるとは、思っていませんでした。
後ろから呼ばれた名前
「あれ?」
振り返ると、エコバッグを肩にかけた課長が立っていました。同じ部署の上司で、誰にでも気さくに話しかける40代の女性です。会社の外で顔を合わせるのは、これが初めてでした。
「あれ、こんなところで会うなんて」
課長の目が、パーカー姿でかごを持つ彼のほうへ移ります。
「もしかして、彼氏?」
冗談めかした、軽い口調。悪気がないのは分かっています。答えは決まっているのに、口から出てきたのは「あ、えっと……」だけでした。助け舟を求めて隣を見ると、彼は小さく頭を下げて言いました。
「どうも」
続く言葉を待ちましたが、それで終わりでした。
「どうも」のあとに続かなかった言葉
課長は少し間を置いてから笑いました。
「ごめんごめん、プライベートだよね。また会社でね」
手を振って離れていく背中を見送りながら、さっきの場面を何度も頭の中で巻き戻していました。「彼氏です」と言うのは、ほんの数秒で済むはずです。私が言いよどんだのなら、代わりに答えてくれてもよかったのに。
会計を終えると、彼は「袋、2つとも持つよ」と両手に提げて歩き出しました。いつもなら軽いほうを私に渡してくれる人です。話をそらされたように思えて、並んで歩く間も返事はどんどん短くなっていきました。
付き合って2年、お互いの友人にも何度も会ってきました。それなのに、私の職場の人の前では彼氏だと言うことすらしない。もしかすると、人に紹介するほどの関係だと思われていないのかもしれない。そう考えるたびに、袋を提げた彼の手元ばかり見ていました。
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黙ったままで終わらせない

























