
母の「犠牲にした」という言葉が重くて距離を置いた俺が、結婚式前夜に原稿を書き直した夜のこと
コラム
婚約者が気づいてくれた母の顔
婚約者を初めて実家に連れていった夜、帰り道で彼女がぽつりと言いました。「お母さん、犠牲にしたって言うたび、すごく不安そうな顔してたよ」。自分では気づけなかった視点でした。母は俺を縛りたかったわけじゃなく、縋るしかなかったのかもしれない。25年、一人で背負ってきた人に、「もう一人で背負わなくていい」と伝えてこなかったのは俺のほうでした。式の前夜、用意していたスピーチ原稿を白紙に戻し、最初から書き直しました。
そして…
マイクの前に立ったとき、手のひらは汗ばんでいました。「母さんは誰より強い人です。全部一人で背負って、俺をここまで育ててくれました」。会場の奥で、母の目が潤むのが見えました。続けて「だから俺は、母さんにもう一人で背負ってほしくない。これからは隣にいる人と一緒に、母さんのことも支えていきます」と伝えました。式を終えた夜、メッセージを送りました。「今日は来てくれてありがとう。これからは、母さんの時間も大切にしてね」。
翌日、返信は一枚の写真でした。久しぶりに本屋へ寄ったと、短く添えられていました。25年分の時間を、母がゆっくり自分のものに戻していけたら、それでいい。今はそう思っています。
(20代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。(ハウコレ編集部)


























