空いてるかだけ聞いて旅行に誘えなかった私と、渡せずにいた1つのお土産

コラム

「書いてなかった」。無理と返ってきた時点で、私は旅行の話を引っ込めていました。責めてくれたほうが、まだ楽だったと思います。

旅行先で買った4つのしおりのうち、1つだけが机の上に残ったまま後期が始まりました。

空いてるか、だけ

同じ学科の4人で、入学からずっと一緒にいました。夏の旅行を言い出したのは私です。ただ、その子には最初に個別で聞くことにしました。前期の終わりごろ、実家の店が忙しいと何度か話していたからです。

「8月の後半って、空いてる?」

「ごめん、8月は実家の手伝いで、ずっと無理そう」

「そっか、了解!」

旅行という言葉は、まだ打っていませんでした。断られたあとに用件を書けば、無理と言った側に気を遣わせるだけだと思い、そこで画面を閉じました。本当は、旅行と書いたうえで断られるのが嫌だっただけです。

残りの3人で日程を決め、海へ行きました。写真を撮るたび、送る先が1つ足りない気がして、私はお土産だけ4つ買いました。

遅れて入った教室

後期初日、私は講義に少し遅れました。教室に入ると、いつもの席にその子はいて、ノートに何か書いていました。写真の話が出たかどうか、私には分かりません。声をかけるより先に講義が始まり、そのまま別々に帰りました。

バイトから戻った部屋で、通知が1件ありました。

「旅行、行ってたんだね」

既読を付けたまま、私は打っては消しました。入力中の表示が向こうに出ているだろうと思うと、余計に文が短くなりました。

「ごめん。8月は無理って言ってたから、誘えなかった」

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