「俺の母親の味と違う」が口癖の彼に、私が黙って食卓に並べた1つの箱

コラム

「これ、母さんの味だ」

数日後、私は同じ箱を買って肉じゃがを作りました。彼が座る前に、空になった箱を彼の茶碗の横に並べておきました。彼は箱に目を留めないまま席につき、肉じゃがを1口食べました。「これ、母さんの味だ」そう言った彼が、ようやく横の箱に目を向けました。箸を置き、箱を手に取って、裏面を私に見せるように傾けました。私は皿を運びながら答えました。「お母さんに教えてもらったの。ずっとこれだったって。」「言えるわけないだろ」彼の声は小さくて、私の方を向いていませんでした。「私のには、ずっと違うって言えたのにね」それだけ言って、私は自分の皿をキッチンのカウンターに運び、そこで食べました。彼が席を立つ音は、最後まで聞こえませんでした。

そして...

翌日から、私は自分の分だけを作っています。彼にはそう伝えました。「これからは自分の分だけ作るね」彼は短くうなずいただけで、何を考えているのかは分かりませんでした。同棲は続いていますし、別れる話も出ていません。ただ、レシピを書きためていたノートは、キッチンの一番上の引き出しから、寝室の本棚に移しました。あの箱を置いていた茶碗の横には、今は何も置いていません。冷めたのは肉じゃがではなく、私の方だったのだと思います。

(20代女性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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