
「元カノのほうが料理上手だったな」と言った俺が、数日後、彼女に隠れて製氷皿で凍らせていたもの
コラム
フライパンの中で、野菜炒めが市販のたれの色に染まっていきました。彼女にごはんを作ってもらえなくなった、最初の日のことです。においは昔よく食べていた味にそっくりで、この先、彼女の肉じゃがが恋しくなるとは、まだ思っていませんでした。
軽い気持ちで口にした一言
きっかけは、彼女の肉じゃがを食べていたときの俺の一言でした。
「元カノのほうが料理上手だったな」
深い意味はありませんでした。元カノの料理は味がはっきりしていて、それをふと思い出して口に出しただけ。
でも彼女は自分の器を持って立ち上がり、流しに置いてから言いました。
「じゃあ明日から、自分のごはんは自分で作ってね」
「え、そこまで言う?」
俺はそう返して笑ってごまかそうとし、彼女の顔を見てやめました。冗談で済む雰囲気ではなかったのです。
何を作っても届かない味
次の日から、彼女は自分の分だけを作るようになりました。
俺は市販のたれで野菜炒めを作りました。元カノがよく作ってくれた味に近く、これで十分なはずでした。ところが2日、3日と続けるうちに、どれも同じ味に感じてきます。
食べたくなるのは、あの日の彼女の肉じゃがのほうでした。見よう見まねで作っても、しょうゆと砂糖の味しかしない。何が違うのか分からないまま冷蔵庫を開けて、奥の瓶に目が留まりました。
彼女が週末に昆布とかつお節でとっている出汁。あの肉じゃがの味の土台は、これだったのです。
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製氷皿に貼ったメモ





























