
「俺の母親の味と違う」が口癖の彼に、私が黙って食卓に並べた1つの箱
コラム
肉じゃがを1口食べた彼は、迷わずその味を言い当てました。けれど私が3か月待っていたのは、その言葉ではありません。彼が箸を置いたあとの、一言でした。
彼の茶碗の横に、私はスーパーで買ってきた1つの箱も並べました。
同棲3か月、食卓で聞き続けた口癖
彼と暮らし始めて3か月になります。営業職で帰りが遅い彼のために、私は帰宅してから2人分の夕食を作るのが日課でした。ところが、味噌汁でも煮物でも、彼は1口食べるたびに同じことを言うのです。「俺の母親の味と違う」最初のうちは、実家の味が恋しいのだろうと受け止めて、砂糖を増やしたり、だしを変えたりしました。それでも返ってくる言葉は変わりません。どこが違うのか聞いても、「わかんないけど、なんか違う」と言うだけで、彼はテレビの方へ顔を戻していました。私はいつの間にか、味見をする回数が減っていました。作り終えた鍋を見ても、また同じことを言われるのだろうと思うだけで、うれしさはどこにも残りませんでした。
彼のお母さんに送ったメッセージ
先月、彼の実家に2人で帰省したとき、お母さんの連絡先を教えてもらっていました。私はその番号に、思い切って肉じゃがの作り方を聞くメッセージを送りました。彼が一番好きだと言っていた料理です。返ってきたのは、レシピではなく1枚の写真でした。スーパーでよく見かける、肉じゃがの合わせ調味料の箱です。「うちはずっとこれよ。あの子、言ってなかった?」画面を見たまま、私は洗いかけの鍋に水を張り直しました。調味料に文句があるわけではありません。ただ、3か月分の「違う」が、何と比べられていたのかを知ってしまったのです。私が量って、だしを取って、煮込んでいた時間は、箱の裏の作り方と比べられていたのだと、そのとき初めてわかった気がしました。
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「これ、母さんの味だ」


























