チャイムを鳴らさず不在票を入れていた配達員の俺が、ドアの前で毎回していたこと

コラム

「これ、お返しします」と差し出された紙の時刻は、俺がトラックの中で先に書き込んでおいたものでした。受け取ったその紙を、俺は制服のポケットに押し込みました。

外階段を上がりきったところで、俺は段ボール箱を片腕に持ち直しました。ドアの前に立ち、中の物音に耳を澄ませます。何も聞こえないのを確かめてから、ドアポストに紙を差し入れました。そのドアが内側から開くとは、考えてもいませんでした。

物音のしない部屋には、チャイムを鳴らさなかった

受け持ちの地区では、同じ時間帯を指定した荷物が一つの枠にまとまって届きます。回りきれない日が続くうちに、俺は留守の多い棟の不在票を、トラックの中で書いておくようになりました。部屋番号と、だいたいの時刻まで先に埋めておくのです。

ドアの前に立ったら、まず耳を澄ませる。テレビの音も足音もしなければ、チャイムは鳴らさずに票を入れる。出てこない家の前で待つ時間を、そうやって削っていました。鳴らせば済むことだと、分かってはいました。分かっていて、楽なほうを選んでいたのです。

あの部屋の前に立った日も、中からは何も聞こえませんでした。俺は箱を抱えたまま票を差し入れ、階段を下りました。

その日も、ドアの向こうからは何も聞こえなかった

次の日の荷物の中に、同じ部屋番号の箱がありました。積み込みのときに伝票を見ていれば、再配達だと分かったはずです。けれど俺は、前の日と同じように書いておいた票を、その箱の上に重ねていました。

外階段を上がり、あの部屋の前で足を止めました。耳を澄ませても、テレビの音も話し声もしません。留守だと決めて、俺はドアポストの蓋を指で押し上げ、票を差し込みました。

蓋から指を離すより先に、内側で鍵の回る音がしました。

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